神戸に人事代行業や就活支援塾をやっている友人がいる。ふた回り以上も上の方だから、友人と表現するのも恐れ多いのだが、私のことを「友人」として各方面に紹介していただいていることもあって、私も友人と呼ぶが、事業の先輩として大いに尊敬している。今年の春と小夏の間、コートがいるかどうか遠出をするには不安な季節に、私は旅がてら彼のオフィスを訪ねた。
オフィスの隅に動物占いの黒ひょうのマスコットがぶら下がっていた。「動物占いは黒ひょうなんですね。僕もですよ」と言うと「自由に生きてる人とか独立している人は黒ひょうが多い気がする」と返してくれて、これまた嬉しいことを言ってくれる。
お返しに話は逸れるが、男性で占いに興じている人というのは器がデカいと思っている。根拠などないものを否定せずに一度飲み込んでみるという姿勢、面白味がある。彼は創業一年目はデザインの会社を立ち上げ何千万だか億だか、額は忘れたが、それくらい大きな規模稼いだらしい。また、手にした大金によって、かつての仲間の人生が破綻していったエピソードも教えてくれるのだった。面白い。
お金が悪いのではなく、お金が本来持っている欲望を暴く。これを書いている時点の私が一度に稼いだお金は精々7桁程度なので、億を掴むという境地は知らないが、将来の億万長者になったときの予防接種だと思って傾聴した。
さて、その彼が人生で成功しない人間の最大の特徴を端的に表現してくれた。
「挑戦を続ける人間はそのうち成功するものなんだけど、それにもかかわらず、ずーっとうまくいかないという人はね。言ってしまえば“頭も性格も悪い”。性格が悪くても頭が良ければうまくいくし、頭が悪くても性格が良ければ誰かが拾って生かしてくれる。どちらもないなら、これはどうしようもない」
わが身を振り返る。性格も頭も子供じみて少々歪んだ、怠惰な人間であることは漏れなく自覚しているのだが。当面は生きたいように生きているので、頭か性格のどちらかは良いのだろうと思うことにした。
だが。やはり、素直と馬鹿に挟まれた平均台から足を踏み外しつつ歩いている気がする。性格も他人が評価すればやや難があるようにも見える。なんだかよく分からなくなってきたので、正直に生きた結果を背負うことが成功だと思うことにした。これでは成功というより納得か。