感情の「月」
従来の占星術
各天体は、自分を個性する人格の一つだと思ってくれると想像しやすいです。一人ひとりには10個の天体が配置されているので、10個の人格を「私」が統合しています。
ある人が主に真面目な人格だとしても、いつも真面目というわけではないしょう。仕事は几帳面だけど、プライベートでは不真面目とか。
学校の授業参観日を想像すると理解しやすいのですが、親に見せるときの顔と、学校で見せてる顔があまりにも乖離していると、照れたり、黙り込んでしまうようなものです。この見せる顔が人格です。一人の人間にいくつもの人格があるということがお分かりいただけたと思います。
個人の中には、小学生くらいの人格、青春を謳歌している人格、父のように厳しい人格、個性的な人格などが誰にでも備わっています。その中でも月は最年少。幼稚園児くらいです。月は周りのことは考えられないし、自分の安心できることを求める。
月は地球に生まれてから最初に発達するもので、快/不快を表します。快/不快が総合されたものを”感情”と呼びます。感情は、慣れ親しんだパターンに近いものほど安心し、そうでないものには拒絶反応を示します。月の反応は自動的です。
また月は、冥王星が持ち込んできた宇宙の創造の光線の下降を、海王星、天王星、土星、木星…金星、水星と、すべての天体を貫いたあとに到達する場所です。月に転写された情報は習慣になり、特に意識しなくてもできるようになります。
歯を磨くという行為が習慣化するのは、健康を維持するという土星の命令が月まで届いた結果です。土星の意志が月に届くまでは、工程があります。木星でとにかくたくさん歯を磨かせられ、磨かないと火星で怒られ、歯を磨くと虫歯にならないという目的意識を太陽が教えて、金星は教育番組で歯を磨く楽しさを伝え、水星は具体的にどんな磨き方をするのが効果的なのかを学ばせてくれる。そうした流れがあって、ようやく月に届いたとき、行為が自動化され、歯を磨かないと気持ちが悪いという感情が形成されます。
月のある星座では、その人の感情の傾向が分かります。
例えば、射手座に月があると正義感が強くて喧嘩っ早い。蟹座にあると仲間思いで、裏切りや否定されるのが怖い。乙女座はきっちりしてて、ルールから外れている人を見ると落ち着かなくて、汚い部屋を見ると強い不快感を持つ。魚座だと優しい性格で困っている人を見ると見捨てられない、そして自分にも甘い気質も持つ。山羊座の月は、野心が強い反面、仕事や目標がないと不安になります。
月は最年少だから、人生に働きかける要素が少ない。例えば、こんな仕事やってられないと思っても、上長から命令されたことはやらなくちゃいけない。個人のエゴと、実際にしなければならないことは基本的にズレがある。月は駄々はこねるけど、他の天体たちから基本的に押さえつけられています。
しかし、影響力が弱いからといって、月の訴えを無視し続けると、精神が病んでしまう。
もちろん月の言うことを聞いてくれる場合もある。天体の位置関係によって、仲良くしてくれる天体、押さえつけてくる天体に分かれます。例えば、父の人格を持つ土星と幼児の月の関係が良好だと、しめるときはしめるけれど、度が過ぎない程度に自由にさせてくれる。逆に関係が悪いと、とにかく月に我慢を強いることになる。抑圧させようとしてくるわけだ。
これを解決しようと思ったら、土星を牽制している天体を調べて、その天体の人格を人生の中で発揮させるように意識すればいい。あるいは月と協力関係にある天体を強めるのも良いです。
超越占星術での月の解釈
超越占星術では、月を考慮にいれません。太陽中心のホロスコープでは地球とほぼ同じ位置にありますし、感情にフォーカスを当ててしまうと、世界に対する認識が個人的な思いに収束してしまい、正しい判断ができなくなってしまうからです。
月は慣れ親しんだパターンを好みますが、人生を創造的に切り開くためにはそうした月の感情は足を引っ張ることになります。自身の感情に固執してしまうと発展すべき分野が苦手だからといって開発されない状況を招く恐れがあります。自分自身の快/不快に縛られ、操られるのは、自由ではありません。
これは感情を押さえつけなくてはならない、ということではありません。感情を押さえつけようとしているのは、また別の感情であり、それは抑圧というものです。抑圧された感情は、火山の噴火のようにいずれ吹き出したり、どこかで不具合を生じさせたりするので、理性的に処していくことです。
自分自身の目的(地球星座)を省みたとき、感情は良い意味で、どうでもよくなる感覚があります。または、心の課題として捉えることができ、人格が成長します。
ですから、たしかに感情はあるのだけれど、それに縛られてしまうと人間的な成長がなくなってしまう。だから月は超越占星術で考慮に入れないという判断です。