天秤座の対人関係は広く浅くで、比較することがテーマでした。それとは対照に蠍座は狭く深くの人間関係を結びます。これは比較ではなく、対象との一体化を体験する星座です。
天秤座のように、距離を取った対人関係では傷つくことはそれほどありませんが、蠍座の対人関係はゼロ距離を目指すので、相手と様々な面で衝突します。お互いの人格に干渉し、壊し合う過程で、新たな人格に変革していきます。
このように、一体化することで、個人の存在そのものが変容することを体験するのが蠍座です。幼虫から蝶へ変態するには一度サナギになる必要がありますが、サナギの中では幼虫の肉体はドロドロに溶けて蝶のカタチへ再構築されます。
蠍座というのは、自分という器の中に、他者の意識を取り込み、自身の意識と混ぜることで、自らの存在を根底から変化させていきます。この変革は、蠍座にとって苦痛ですが、これだと決めたものがたとえ異物や毒だろうが積極的に取り込んでいきます。
風属性のあとには水属性がやってきますが、これは理念的な風の意識を水という情感の中に定着させる過程を意味しています。天秤座は幅広い人との交流の中で社会的な人格を作ろうとします。
様々なタイプの人との関わり合いの中で進みたい方向が定まったとき、それを自身の心に定着していくのが蠍座です。完全に自身の意識に定着し、変容するまでは離れることができません。これが水の不動(固定)タイプの特徴です。情感を固定していくのです。
人と深く関わるには、防衛心の殻を破る必要があります。これは個人を守っている権利というバリアも含まれますので、蠍座の体験は人に話せないような常軌を逸したものになりがちです。常識が通用しない事件のようなものによって、それまで持っていた常識や価値観を破られ、その事件を受け入れられる人格を新たに作り出します。弁証法的に社会的な人格を高めていくので、一度変容したあとも、新たな対象を見つけては自分を殻を破り、対象と一つになろうと傷つきながら昇華していきます。
天秤座における個人と個人のテリトリーを、蠍座は平気で壊していきます。他者へ過剰侵入すると、何が正しいのかが分からなくなっていきます。愛情は常識的な道徳を超えると考えるならば、相手の生命そのものを支配することになりかねませんし、または自分の人生そのものを対象に捧げてしまうでしょう。
このような密着性から、蠍座には強い依存性があります。水属性は融合することが特徴なのでどの水属性(蟹座・魚座)も依存的です。水のあとは火が起こりますが、これは依存した関係からの脱却を意味しています。水から火に移るときは、寂しさや孤独の感情が溢れ出します。離れたいのに離れられないという気持ちは、水属性後半になると強まりで、火の到来とともに自身は孤独であったことを悟り、一人で道を歩んでいきます。
蠍座の一体化は、人だけには限りません。企業や組織、国家、研究対象なども含みます。また死者の意志という意味もあります。これは蠍座は先祖から授かった影響が大きい分、それに振り回されてしまう=死者の意志が反映されているという解釈になるのです。
水と地が合わさると、お金という意味が出来上がります。蠍座は情によってお金やエネルギーを引き出すのが上手です。財産運が強いのも蠍座の特徴ですが、これは財産を引き継ぐ代わりに、相手の意志に従属するということでもあるので、一概に幸運とは言えません。